甲斐田 裕子
家にたとえるなら「美しい日本語」を話すことは、とても大切な骨組みです

ディズニー作品で主役に抜擢徐々に仕事が広がっていった

<TSA市原理事長>(以下、市原)

卒業してしばらく経ちますが若々しくハツラツしていらっしゃいます。甲斐田裕子さんです。


<甲斐田裕子>(以下、甲斐田)

こんにちは! よろしくお願いします。


<市原>

市原 デビューしたての頃、ディズニー映画『プリティ・プリンセス』の主役に抜擢され大騒ぎになりましたね。ディズニー作品に出演するのは本当に大変なことなので、マネージャーが大喜びして。


<甲斐田>

はい。そうそうたるメンバーに囲まれてやらせていただきました。あの作品のお陰で、ディレクターさんから声をかけていただき、徐々に仕事が増えて…。洋画の場合、まずは事務所のマネージャーがプロデューサーやディレクターに名前を売り込んでくれるんです。いざ使ってもらったときに、次の仕事につなげられるのかどうかは、自分の力量しだいなんですよね。アニメーションはちょっと違っていて、ほとんどオーディションで役が決まっていきます。


<市原>

しっかり芝居ができてないと生き残れない世界だね。いろんな作品に出ているけれど、もっとも印象深いものは?


<甲斐田>

レギュラー初主演の海外ドラマ『トゥルー・コーリング』でしょうか。45 分番組を1日2本録りするから、収録は朝から晩まで。特に第1話はほとんど私がしゃべっていたので、声がもつかもたないか、ギリギリのところでした。実は『プリティ・プリンセス』のときは、1日中録っていて声がもたなかったんです。1週間後に収録日を設けていただいて、谷育子さんにもご足労願って……。


<市原>

そうやって考えると肉体訓練は本当に大切なことなんだね。


<甲斐田>

そうですね。だいたい収録は朝10時から始まりますが、翌朝5時になったという話を聞いたこともありますよ。


<市原>

ひゃ~、19時間も!?寝袋持参だね(笑)。そういう大変な仕事だけど、みんな芝居が好きだからやっていて幸せなんだろうね。さて、ここからはTSAを卒業してからどんなプロセスで今に至ったのか、詳しく聞かせてください。


<甲斐田>

はい。


「輝きが失せたな」と言われ基礎と骨組みを学び直した


<甲斐田>

卒業してから通った賢プロの養成所は、週1回3時間だけ。あとの6日は何もすることがなく家でじーっとしていました。「これで何を学べというのか」と半年も悩んで(笑)。でもある日気付いたんです。「授業をマネージャーが見にきているということは、学ぶ場ではなく、こういうものを持っているぞと見てもらう場なんだ」と。そこでシェイクスピアの劇団の研究所に入り、養成所と並行して「美しい日本語」を話すことを学びました。


シェイクスピアは本当に長ったらしい文章で、一人のセリフが何ページにわたることもあるんです。それを普通に読んでしまうと観客は寝てしまう。でも「美しい日本語」を話すテクニックを身につければ、文章をそのまま観客に伝えられます。家にたとえるとわかりやすいんですが…。皆さんが今レッスンをしている発声や滑舌は、家を支える地盤です。「芝居は教えてくれないのか」と私も1年目は思いましたが、この地盤がしっかりしていないとすぐに崩れてしまいます。そして地盤の上にたつ骨組みとなるのが「美しい日本語」。そこに個性をぶつけ、いろんな外壁が生まれます。もちろん日々いろんなことに挑戦し、いろんな恋愛をして個性を磨くことも大切だけれど、一番忘れてはいけないのは外壁の中にある地盤と骨組み。ユニークな外壁を珍しがられても、地盤や骨組みがしっかりしてないとすぐに崩れてしまいます。だから、授業は攻めの姿勢で!


TSAは週5日制で、何もしなくても教室にいれば先生が来て教えてくれます。すると、つい受け身の姿勢になり聞き流してしまうことも。でもそうではなく「この授業からどうやって知識や技を得るのか」攻めてみる。授業に取り組む姿勢しだいで、1年後は全然違うレベルになっていると思います。


私の場合、劇団がよかったかどうかはわかりませんが、賢プロの所属になり、仕事に専念するために劇団を辞めました。ところがしばらく経った頃、マネージャーに言われたんです。「お前、最近輝きが失せたな」って。「えっ! 退団したから!?」と思い、もう一度戻って基礎と骨組みを学び直しました。


今、私は「この現場で何かをつかみたい!」と思って、スタジオにいるのがすごく楽しいんです。特に洋画の吹替えはベテランの方が多く、劇団の方もたくさんいらっしゃいます。吹替えのキャストで頭のほうに名前が並んでいるのは、劇団俳優座、文学座、劇団昴、劇団青年座…と、劇団の人ばかり。そういう人たちに私たちは勝っていかないといけない。何年もの下積みを経て、舞台の袖からいろんな先輩の芝居を見て、舞台もたくさん踏み、叱咤されながら這い上がってきた人たちと、同じレベルに立つのは並大抵のことではありません。日々鍛錬、自分との闘いです。それが一生続くのが役者だと思います。なんだか偉そうなことを話しましたが、私が日々、やらなくちゃいけないと思っていることです。みんなと同じまだまだ勉強中の身なので、一緒に頑張りましょう。そしてスタジオで会いましょう。


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