GRADUATES
第一線で活躍する多くのTSAの卒業生たち
賢プロダクション所属
甲斐田 裕子
主な出演作吹替え
- 『ワンダーウーマン』ダイアナ(主役)
- 『プリティ・プリンセス』アミーリア(主役)
- 『ヴィクトリア女王 世紀の愛』ヴィクトリア女王(主役)
- 『ゴシップガール』セリーナ・ヴァンダーウッドセン(主役)
- 『ブラックリスト』エリザベス・“リズ”キーン
- 『されど罪人は竜と踊る』ニドヴォルク
- 『機動戦士ガンダムUC』マリーダ・クルス
- 『カブキブ!』浅葱芳
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』サーベラー ほか
トントン拍子に自分でも驚いています
音響監督に声をかけられディズニー映画に初主演!
ー 当時のクラスメイトにお話をうかがうと「甲斐田さんは在学中から優秀で、いつも参考にしていた」という人は多いようです。
甲斐田 いえいえ。卒業前のオーディションで賢プロダクションの養成所に受かったのも、所属オーディションに受かったのも、たまたまです。私はコツコツやっていきたいタイプなんですが、あまりにもトントン拍子にきちゃったので、そのスピードについていくのがちょっと大変でした。
ー 賢プロダクションはどんな事務所ですか?
甲斐田 個性的な役者が多くて、アットホーム。和気あいあいとした空気は、TSAと同じです。
ー デビュー作は?
甲斐田 海外ドラマ『シナリオライターは君だ!』で一言デビュー。初レギュラーはアニメ『ジーンシャフト』のソフィアという、主人公の友人役です。まだ養成期間中だったので、オーディションに受かったときは事務所中でビックリしました(笑)。収録前に、現場を多く経験している友人に2時間ぐらい長電話をして、あれこれアドバイスをもらったんです。スタジオの礼儀とか、何分前に入っ たらいいのかとか...。共演する声優さんの名前を伝えて「この人はどんな人」って聞いたり。でもいくら聞いても不安で、1話目は端っこのほうで小さくなって緊張していました。「レギュラーなんだからそんな端っこに座ってないで」と言われ、微妙な位置を探して座っていましたね(笑)。
ー この業界は音響監督などの目に留まると、次の作品、次の作品とつながることがよくありますが、そういう経験は?
甲斐田 ディズニーの実写版映画『プリティ・プリンセス』のアミーリアがそうかもしれません。
ー 初めての主役ですね。
甲斐田 はい。洋画『ドクトル・ジバゴ』とアニメ『ゴーゴー五つ子ら・ん・ど』に出演させていただいたときの音響監督さんから、『プリティ・プリンセス』のオーディションを受けるように勧められたんです。初めてその知らせをマネージャーから聞いたのは電話でした。「落ち着いて聞いてね。『ドクトル・ジバゴ』の音響監督さんから連絡があって、主役!主役のオーディションだよ」って。心弾む反面、不安でいっぱいでした。
ー そしてアメリカでの審査にも合格し、主役を獲得。その音響監督さんは、甲斐田さんのどこが気に入ったのでしょうか?
甲斐田 「芝居が素直だ」とおっしゃっていました。でも「もっとくだけた、スコーンと抜けたような表現ができるようになったらいいよね」とも言われましたね。
ー 初主役の現場はどうでしたか?
甲斐田 読まない頁がないというぐらいセリフが多く、朝10時〜夜10時まで声を出しっぱなしでした。一日中、同じ声を保つ、かすれないようにするというのが、どれほど大変なことか身にしみて実感しました。テンションも下げないようにはしているんですがやはりだんだん落ちてくるし、集中力も欠いてきてしまう。そこの部分を勉強させてもらいました。
ー 収録を終えて、感想は?
甲斐田 精一杯やりました。でも反省点が本当に沢山あります。収録が終わって、スタジオ近くの沖縄料理店でオリオンビールをいただきとても美味しかったけれど、「プッファ〜」という開放感満点のビールではなかった(笑)。これをバネにさらに上を目指していこうって思いましたね。
ー いろんなジャンルの作品に出演されていますが、どの仕事が好きですか?
甲斐田 洋画が楽しいです。以前出演した海外ドラマ『マウンテン・ウォーズ』が特に面白かった!「たとえ映像の中で演じている人が声を出していなくても、面白くなるならアドリブを入れたほうがいい」というスタイルで収録したんです。じっくりビデオを観て「こういう顔をしてるから、こんなアドリブを入れてみよう」とか、自分も作品作りに参加しているのを実感できました。
役者のオーラを感じる先生に卒業した今も刺激を受ける
ー そもそもTSAに入学したワケは?
甲斐田
高校演劇をやっていた友人4人と、いろんな学校の体験入学に参加したんです。そのうちの一人が「私は東京メディアアカデミー(※)がいいと思ったんだけれど」と言ったら「そうなんだ、私もだよ」って。結局、4人のうち3人が本校を選びました。仲良く一緒に入学しましょうというわけではなく、それぞれがここが一番だと思った。私が気に入ったポイントは、アットホームな雰囲気です。体験入学でも、すぐに先生方や在校生の先輩と仲良くなることができました。
ー TSAで影響を受けた先生は?
甲斐田 田村連先生を尊敬しています。現役の役者で、演出や振付もやっていらっしゃる方です。学生一人ひとりを細やかに見てくださいました。「君はここが 欠点だから、こういうふうにやっていったら大丈夫だ」とか「君のその芝居をもっとよくするためには、こうやったほうがいいよ」とか。今でも先生の公演はときどき観に行くんです。授業でジョン・ダンという詩人の朗読をやったことがあり、それと同じものを田村先生がひとり芝居でやられていたことがあって、すごく勉強になりました。とにかく役者としてのオーラがあり、いつも刺激を受けています。
ー 役者人生のスタート地点で貴重な出会いをしましたね。
甲斐田 はい。卒業時に田村先生から「習ってきたことを洗い流して真っ新な自分になりなさい。それでも内側からあふれでてくるものが個性だから、それを大切に育てていきなさい」というメッセージをいただきました。今もその言葉を、大切にしています。
※主な出演作は2018年5月の情報、インタビューは2007年に行われたものです。