中尾隆聖
自分を見ている一人がいることを信じる。その一人を見つける。これぞ必勝法
5歳で現場に立ち、TMAの特別講演にいらしたのは60歳目前。役者人生55年の大ベテランが、学内オーディションを間近に控えた学生たちの不安や迷いを一気に吹き飛ばした。心の奥底にしっかり握っておきたい、宝物の言葉を届けよう。超保存版!

文字が読めなくて黒子におじいちゃん

<TSA市原理事長>(以下、市原)

憧れの超大物! 芸歴はいつからですか?


<中尾隆聖>(以下、中尾)

5歳です。


<全員>

エッー!


<中尾>

小学校に上がる頃にラジオドラマ『フクちゃん』でレギュラー出演。まだ字が読めないので祖父が付き添って、マイクの脇でコショコショと読んでもらって。。


<市原>

(笑)別世界! 宇宙から来られた人の話のよう。


<中尾>

まんざら嘘じゃない(←ばいきんまん)。


<全員>

(爆笑)


<中尾>

10代の頃は早く30になりたくてね。「30になればあの芝居ができる、大丈夫」と信じて、いざ30になったら…40だなって。40の時は50だよって(笑)。ずっと上手くなりたかった。今60を迎えてやっとわかったのは、ヘタクソだったってこと。以来、違った楽しみ方ができるようになりました。


<市原>

深いな。現状に満足せず、ずっと上を目指されてきた。そういえば、昔TSAに来られたとか。


<中尾>

81プロデュースができた当初はまだ教室が無くて。関俊彦や佐久間レイたちと勉強をするために、こちらの教室を借りたんです。


<市原>

嬉しくてゾクゾクします。それにしても、当時は今のような設備もシステムも何も無かったけれど、皆、根性はありました。


<中尾>

例えば13分ものの収録で先輩がずっと芝居をしてきて、自分のたった一言の出番が12分って時は、もう震えてトチっちゃう。すると抜き録りなんて無いから頭からやり直し。えらい緊張感でした。


<市原>

絶対にトチれないと震えてる時間はすごい経験値。ただ長年やってきたなんてもんじゃない。活躍されている声優さんがデッカイのは、もがき、研究し、負けずにやってこられたからなんですね。


監督たちが入れているアニメの息を見逃すな

<市原>

ぜひ皆からも質問を!


<学生>

どんなことに心がけて芝居をされていますか?


<中尾>

物語の中に入って集中し、その物語の中で息をすること。芝居の基本はブレス、息ね。声の仕事は言葉だと勘違いしがちだけれど、言葉は最後。その前に息をしなくちゃいけない。セリフを合わせるんじゃない、集中して息を合わせるんだよ。洋画は画面の役者さんが息をしているけれど、アニメは、監督やアニメーターさんが絵に息を入れている。集中力が欠けるとそれを見逃すから、アニメはとても難しいんです。


<学生>

学内オーディションで自分をよく見せるには、どうアピールしたらいいのでしょうか?


<中尾>

声を作らず地声で勝負してください。ただ審査員全員に自分を分かってもらうのは無理。一人に分かってもらえればいい。もしかするとその一人は、オーディション会場の扉の外にいるのかもしれない。広い世界の中で必ず一人は自分を見ていると信じること、その一人を見つけること。この仕事をしていく上での必勝法です。


<学生>

業界が若い声優に求めているものは何でしょうか?


<中尾>

あなたは自分に何を求めているの? 「業界やプロダクションが求める色になります」なんて人、どこもとりません。そんな簡単なものじゃない。あなたが求めているものになってください。81プロデュースの養成所でよく話すのは、ウエイトの大切さ。この仕事は「いかに待つか」がとても大事です。週1回のレッスンで、僕は養成所生が1週間をどう生きてきたのか、その顔を見ています。それは練習量ではなく、「声優になるんだ」という気概を持って生きてきたかどうか。レッスンとレッスン、デビュー後はオーディションとオーディションの間に、どう生きるのか。つまりどう待つのか。いい待ち方をすればウエイトは縮まり、次の仕事につながる。これは一生続きます。気概を持って、さぁ頑張って!


<全員>

ありがとうございました!


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