「好きになる」から始める役作り

市原 「洋画やアニメーションをはじめ多方面で大活躍されていますが、それぞれどんな思いで演じていらっしゃいますか?

森川 アニメーションは二次元の世界ですから、自分が演じることで、「役がいのちを授かる」実感があります。そういう意味ではゼロから作り上げるクリエイティブな仕事です。一方、洋画はもともとでき上がっているものなので、役者の表現や演出の意図を理解し、日本語でどれだけ表現できるかが重要です。アニメーションと洋画は、役へのアプローチがだいぶ異なりますね。

市原 なるほど。トム・クルーズやブラッド・ピット、私が大好きな海外ドラマ「glee」ウィル役のマシュー・モリソンと、いろんな役者の吹き替えもされていらっしゃいますよね。役者ごとのアプローチ法というのは、あるのでしょうか。

森川 プライベートで映画などを観る時はつい自分の好みや趣味で選びがちなので、実は仕事をさせていただいたからこそ出会えた、と感じる作品も多いんです。だからその出会いを大切にして、一つひとつの作品を好きになることが一番大事。同時にそれが個々の表現につながっていると思います。

市原 いつも生き生きしている森川さんからは、「この仕事が本当に好きだ!」という気持ちが伝わってきます。

森川 そうなんです(笑)。この世界が大好きなので、毎日夢のよう! 僕は一度「なりたい!」と心が決まったら、努力が苦にならないタイプなんです。そうやって夢を手に入れられたのは、本当に幸せなことですよね。

市原 努力家であるうえに、たくさんの人に愛されています。森川さんご自身もまた、「人」が好きなのでは?

森川 はい、僕は声優業界全体を愛しています。アニメーターさんも、音響さんも、市原校長のもとでがんばっている若い人たちも。業界に関わる人、めざす人、すべて好きなんですよ。今はたまたま声優にスポットライトが当たることが多いけれど、番組の打ち上げなどではいろんなスタッフさんにお会いできます。すると「こんなにたくさんの人が力を合わせているんだ」と実感します。大勢の力が結集しているからこそ、日本だけでなく、世界中に作品を届けられる。最近は、海外からの反響も大きいですからね。吹き替え版ではなく、日本の声優が演じている作品を観て、日本語の勉強をしたという方もけっこういらっしゃるんです。

市原 声優としての仕事が、そのまま日本語の教材になっているわけですね。TSAでもアニメーションや映画に勇気をもらった、人生観が変わった、という学生が多いんです。ですから、彼らのあこがれの的である声優の影響力はとても大きいと思います。

森川 最初は僕も、単に“アニメーションの声”という、一部分を担当している仕事だと思っていました。でも「あのキャラクターが森川さんだったから、あのセリフに感動した」と言っていただけることもあり、「声優はいろんなものを背負っている」と責任感を感じるように。ラジオや雑誌、イベント、特別講義などで僕がお話したことが、だれかの人生を変えるかもしれない。いつもそう心に留めて仕事に臨んでいます。

市原 森川さんのように第一線で活躍される方は、実力はもちろんのこと、外見も洗練されていて、人柄も素晴らしい。私はずっと森川さんにお会いしたくてようやく実現し、2度目に再会した時のこと。すぐに「ごぶさたしています!」と挨拶してくださって、とても感動しました。TSAでも素敵な声優になるには、「実力」と「外見」と「礼儀」の3つが大切だと教えているんです。

森川 TSAさんには特別講演などでお伺いしていますが、とてもいい雰囲気ですよね。学生さん一人ひとりが元気に挨拶してくれて、こちらの話を一生懸命聞いてくださる。僕は、若い人は「最初は下手でいい」と思っているんです。僕自身、そうでした。たとえ下手でも、間違いを恐れず、思ったことを表現しようという気持ちが大切。僕らの仕事はみんなで一緒にやる仕事だから、元気に挨拶できたり、一生懸命取り組んでいたりする人は、周囲から「この子とまた仕事がしたい」と思ってもらえるんですよ。TSAの学生さんたちからは、本当に純粋な熱意が伝わってきてうれしかったです。

市原 ありがとうございます。私自身、笑顔いっぱいの学生たちの挨拶に、元気をもらうこともしょっちゅうなんですよ(笑)。

森川 いいことですね。声優は人に元気を与える仕事ですから。

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